投稿日|2018.4.25
「死亡による逸失利益」を算定する際、給与所得者、事業所得者、家事従事者、幼児など年少者・学生・無職者によって基礎収入が
異なりますから注意しなければなりません。給与所得者と事業所得者以外は、原則として賃金センサスを基礎として算定します。
*死亡による逸失利益算定の基礎は職業により異なる
● 給与所得者 給与所得者は、原則として事故前の現実の収入額を基礎として算定。
● 事業所得者 自営業者、自由業者、商工鉱業者、農林水産業者などの事業所得者については、原則として事故前の申告所得を基礎として算定。
● 家事従事者 家事従事者は、原則として賃金センサスの女性労働者の平均賃金を基礎として算定。
● 幼児など年少者・学生 幼児などの年少者や学生は、原則として賃金センサスの平均賃金を基礎として算定。
*給与所得者の場合は事故前の収入額が基準
給与所得者の場合に逸失利益を算定する際には、事故前の現実の収入を基にします。現実の収入が賃金センサスの平均給与額以下の場合、
被害者に将来賃金センサス平均給与程度の賃金を得られる可能性が認められれば、賃金センサスの平均給与額を基礎として算定します。
⓵給与額には本給、各種諸手当、賞与等が含まれます。
⓶将来の昇給については公務員、大企業の従業員などのように給与規定、昇給基準が確立されている場合には、考慮されます。なお、小企業であっても
将来昇給することが明らかであれば、昇給を認められる余地はあります。
⓷将来のベースアップについては、裁判の口頭弁論終結時までの分は、認められても、その先将来の分は要素が不確定で予測し難いと否定される例が少なくありません。
⓸退職金については、将来定年まで勤務していたら得られたであろう退職金と、現実に事故死亡時に支給された退職金との差額が逸失利益とされます。
⓹恩給、退職金などの各種年金については、肯定される例が多いのですが、老齢厚生年金、国民老齢基礎年金、退職共済年金については、年金の受給権が被害者個人の
一身専属的な権利であることを理由に、否定される例もあります。
なお、これら各種年金を受けられなくなることによる逸失利益の算定に関して、被害者本人の受給権が失われることに伴って、遺族に対して年金が支給される場合には、
「既に支給された分を全損害額から控除する」という裁判例があります。
※ 賃金センサスとは
賃金センサスとは、厚生労働省が毎年発行する平均給与の総計表のことです。賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計の男性労働者または女性労働者の
平均給与が示されています。 適用される賃金センサスは、事故年度にとらわれず最新の年度のものでもかまいません。そのまま全額が認められるとは限りませんが、
損害賠償を請求する際の基準ですので、高額になる方を選んで請求すればよいのです。
◆ まず弁護士に相談する
死亡による逸失利益の損害は、極めて高額となりますので、保険会社はとかく減額することを考えており、保険会社で調査した類似の事案を参考に、呈示した保険額の
範囲内で被害者側を説得しようとするのが常です。後で悔やまないためにも、示談する前に、必ず交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士と相談するべきでしょう。