投稿日|2018.4.13
労働能力喪失の割合は、労働能力喪失率表を参考にして、被害者の職業、年齢、性別あるいは現実の減収の程度などで、
その喪失割合が定められます。後遺障害の等級が同じでも、労働能力喪失の割合は被害者によって異なります。
*労働能力喪失の割合
労働能力喪失の割合は、労働能力喪失率表が、一応の基準となりますが、被害者の職業、年齢、性別、障害の部位・程度、
事故の前と後との稼働状況等に応じて決められますので、労働能力喪失率表のとおり認められるわけではありません。
したがって、後遺障害が発生していても、事故後にも事故前の収入が維持できた場合には、労働能力喪失を否定されたり、
あるいは機能回復や職業訓練により、ある程度の収入が見込めるような場合には、労働能力喪失率表の喪失率よりも相当下回って
認定されているのが実情です。
公務員や大会社のサラリーマンのように、収入が安定している場合には、仮に第9級の後遺障害に当たり、労働能力喪失率が35%と
されていても、今後の昇進の可能性、収入や昇給等に全く影響がなければ、後遺障害による逸失利益は認められません。なお、
この場合にも後遺障害の慰謝料は別に認められます。
⓵労働能力喪失の割合については、労働能力喪失率以上に認定された例もあります。
⓶現実の減収がなくても今後、昇進・転職・失業等により、不利益をこうむる可能性があるとして、
ある程度の労働能力喪失を認めた例もあります。
⓷一定期間後には労働能力が回復するものとして、労働能力喪失割合を段階的に減らす例もあります。
※ 労働能力喪失の割合は、個々の被害者によって違いますので、保険会社と示談する前に、自分だけで判断せず各地の「日弁連
交通事故相談センター」や「交通事故紛争処理センター」等の交通事故専門の弁護士に相談したほうが無難です。
⓸外貇の醜状は労働能力の喪失として逸失利益が認められる例よりも、慰謝料請求の面で認められる例があります。
〇外貇醜状は、後遺障害と認定されれば後遺障害等級表の7級12号、12級14号および15号、14級10号のいずれかに
当たりますが、外貇醜状や歯牙欠損などについては、後遺障害と認められてもそれだけでは労働能力の低下とはならないため、
一般的には後遺障害の逸失利益としては否定され、後遺障害の慰謝料でその分を含めて考慮されることが多いのです。
■ 判 例
・スナック経営者の女性(46歳)に顔面醜状の後遺障害(7級12号)が残った事案で、7995万円余の逸失利益の請求は
否定されたものの、1000万円の慰謝料請求に対して慰謝料2500万円を認めた裁判例。
・銀行員の女性(20歳)の額部分に線状瘢痕、瘢痕拘縮が残った事案で、逸失利益は否定されたが、慰謝料1000万円を
認めた裁判例。
※女子の外貇醜状については、醜状の程度が著しく、このために現実の収入が減少したような場合には、後遺障害による
逸失利益の損害を認められます。
■ 判 例
・女子(6歳)の顔貇醜状(7級12号)について、67歳まで40%の労働能力喪失を認めた裁判例。
・女子(16歳)のパート店員の顔貇醜状痕(12級14号)について、10年間10%の労働能力喪失を認めた裁判例。
・女子(60歳)のマンション管理人の顔面線状痕(7級12号)について、11年間25%の労働能力喪失を認めた裁判例。