投稿日|2018.9.14
自賠責保険と任意保険とでは、過失相殺適用の範囲が違います。
交通事故で被害者側に支払われる保険は、まず自賠責保険から支払われ、それでも損害賠償額が不足する場合に、
任意保険によってその不足分を補てんするかたちで支払われることになっています。
*自賠責で適用がなくても任意保険では厳しくなる
自賠責保険の支払いでは被害者側に過失相殺の適用がないような事案であっても、任意保険の支払いに際しては、
個別具体的に詳細な過失割合が決められており、保険会社ではこの被害者側の過失責任を厳しく指摘し、減額を主張してきます。
《具体例》 損害賠償請求額が200万円の場合
交通事故でAさんが負傷して、治療費、通院交通費、休業損害などの損害賠償請求額が200万円だったとします。
・過失責任がない場合・・・自賠責保険から傷害事故の上限である120万円の保険金が支払われ、その後、任意保険から不足分の80万円が支払われます。
・過失責任が10%程度ある場合・・・自賠責保険が先に支払われます。自賠責保険上では、10%程度の過失責任では被害者に重大な過失があったとはみなされず、自賠責保険から満額の120万円が支払われます。しかし、任意保険を支払う保険会社では、200万円の損害額のうち、Aさんの過失割合10%を減額します。
200万円×(1-0.1)=180万円、この過失相殺後の180万円から自賠責保険で支払われた120万円を差し引いた180万円-120万円=60万円、これが任意保険から支払われる金額となります。
・70%程度ある場合・・・自賠責保険から先に支払われますが、70%の過失責任では自賠責保険上も被害者に重大な過失があったとみなされます。まず、傷害事故に対する一定の減額率である20%が減額されます。
自賠責保険では損害額が200万円だと自賠責保険の上限の120万円より高いので、保険金額を基準に120万円×(1-0,2)=96万円が、損害額として算定され、自賠責保険から96万円が支払われます。
次に任意保険の方ですが、任意保険を支払う保険会社で過失責任の70%を減額します。 200万円×(1-0,7)=60万円、この過失相殺後の60万円から、自賠責保険で支払われた96万円を差し引きます。
60万円-96万円=-36万円(保険金の払い過ぎ)となりますので、保険会社では任意保険の支払いを拒否することになります。
〈注意〉たとえば損害額が100万円であった場合には、自賠責保険の上限の120万円より低いので、100万円の20%を減額した80万円が自賠責保険で支払われます。この場合にも70%を過失相殺すると、100万円×(1-0,7)=30万円となり、やはり保険金の過払いとなるので、任意保険の支払いはありません。
このように、保険会社の算定では、まず被害者側の損害賠償額に過失相殺を適用して減額し、その額から自賠責保険で支払われた保険金額を差し引き、その残りがあれば任意保険から支払いが行われます。
しかし、その残額がなければ支払いはしません。また、自賠責保険では満額が支払われた場合でも、任意保険の支払いでは過失割合が厳しく査定され、大幅に減額されたり、まったく支払われないこともあります。